categoryスケッチ帳

『早春のあずさ』

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 始発で羽田に飛ぶ。青森は6.7℃。春物の薄いジャケットでも車の中で汗ばむほど。東京は16℃。荷物しょって歩き回ると暑くてたまらない。
 モノレールから雨のそぼ降る沈んだ景色を眺めていたら、桜の2-3分にほころんだ色が見えた。

 とたんに意識が彼方にひらけた気がした。はるかな気持ちになった。護岸された味気ない水路の端に、桜が1本あるだけで、そこだけ時間の流れが異なるように、特殊な場がつくられているように見える。

 「あずさ」で松本に向かう。八王子を過ぎた辺りからもう、景色が変わってくる。カラマツ、ナラの冬木立が霧にけぶっている。遠くの山は青く、暗く、すさまじい形に立ちのぼる雲に巻かれている。リンゴの里で、青森に似た気温かもしれないが、水分の量が圧倒的に違う。ここらは雨が降るのだ。

 そして真っ白に満開のアンズ、ユスラウメ、桃。ぶどう畑の根元に、レンゲ色に広がるホトケノザ。雲の切れ目に、トンネルの間に間に、現れては見えなくなる。
 桃源郷をのぞいたような心持ちになった。

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〔テーマ:自作小説ジャンル:小説・文学

 









        
 
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