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categoryアンチ・プリンセス・ファンタジー

『シンデレラの覚醒』

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今度こそ、最終話?
むりやりハッピーエンドっぽくしたら、つまんなくなった。

緑川のターンが来ない。
室長のターンも来ない。

覚醒したハナちんの明日はどっちだ?


 ### ### ### ### ### ### ### ### ### 

 私は何でこんなところにいるんだろう。たくさんの友人たち。みんなと会えてうれしいはずなのに。
 結婚する小澤くんは照れ臭そうで、でも幸せそう。いつもちょっと皮肉を交えて話す小澤くんは、自分にも友人にも公平で冷静な観察をする子だ。さりげなく研究室の中ではぐれている後輩をフォローして面倒を見ていた。背が低い男性にありがちな虚勢を張ったところがない。もともと落ち着いた自信を感じさせる子だったが、生涯の伴侶を得て、祝福してくれる友人たちを温かく包むような大らかな笑顔を見せている。
 来てよかった。この場に居合わすことができて幸せだ、そう感じられる結婚式。

 なのに、私は違和感で胸がちりちりしていた。
 会場に緑川と2人で入った途端、懐かしいみんなに囲まれた。特に何も説明しなくても、2人の所属が同じというだけでみなは何か納得したようだ。
 私はこの年になるまで、男性とつき合ったことがなかった。だからわかっていなかった。「つき合う」というのがどういう意味か。「つき合う」というのはひとりの男性にそのコミュニティで所有権を主張されるという意味だ。もし私にアプローチしたければ、その男性の許可を得る必要がある。許可なしに私にちょっかいを出せば、コミュニティ全体を敵に回す。
 私はみんなのお母さんから、緑川の ”もの”になったのだ。

 カナちゃんもアヤノちゃんも意味ありげに視線を送ってくる。でも私の隣に緑川がいるので、明らさまなことは聞いてこない。先生方は、「次は誰の結婚式かな」と緑川をからかう。

 でも私は目に見えない束縛に息がつまりそうになっていた。
 もし結婚して、左手に結婚指輪をつければ、この束縛はもっと強くなるのだ。
 ”奥さん”と呼ばれ、夫の苗字で呼ばれ、旅行も買い物も出張もひとりで決められなくなる。

 私と同級の女性で、この結婚式に来ているのは千夏だけだった。
「ちーちゃん、あれ、今日はひとり? 下田くんは?」
「今回は家で子守。彼ばっかり出かけてるから、たまには私も友達に会いたいって言い張ったの」
「よかった。会えて」
「そう。下田くんは ”理解あるご主人”ですからね」
 千夏はちょっと口を曲げて笑った。
「ハナはいつまで自由の身でいるつもり?」
「さあ?」
 私は肩をすくめた。
「でも驚いた」
「え」
「ハナはそういうの、興味ないのかと思ってたら」
 千夏の言いたいことはわかった。

 興味がなかったわけじゃない。興味がないフリをしていただけだ。ただ、どうしていいかわからなかっただけだ。集団の中で ”女”としてどう振舞うべきか知らなかったから。
 獲物を決めて狩りをすることなどできなかった。だから、ただ権利を放棄していたのだ。

「しかし、よりによって緑川とはね」
 千夏の言いたいことはわかる。緑川は私のような ”初心者”には向かない。
「ま、相談ならいつでも乗るわよ」
 私がよっぽど心もとない顔をしたのだろう。千夏は笑い出した。
「なあに? 早速、悩み事? どうしたの?」

 立食形式の披露宴だったので、千夏は私を隅の方のフラワースタンドに連れて行った。
「さ、千夏姉さんに話したんさい」
 私は仲間たちとさざめいている緑川を目で追いながら、ぽつぽつと青沼ゆりなとの顛末を話した。

「で、ハナは何がひっかかってるの?」
「何がって……」
「男があの年まで童貞だと思ってたわけじゃないんでしょ? しかも緑川よ?」
 私は千夏の明らさまな言葉に赤面した。
「今はハナを大事にしてくれるんでしょ? 過去に拘って今の幸せを逃すつもり? 万年少女もいいけど、いい加減、大人の女になりなさい」
 私は反論したかった。でも言葉が出てこない。私は何が悲しかったんだろう。なぜ、裏切られたと感じたのだろう。
「その子、私も聞いたことある。”学会グルーピー”よ」
「グルーピー?」
「グルーピーが何かぐらい知ってるんでしょう? 将来性はあるけど女慣れしてない理系の研究者をねらって、いくつか研究室を転々としたみたいよ。見た目若く見えるけど、けっこうな年ならしいわ」
 私は眩暈がしてきた。そんなことのために大学院に入る人がいるなんて信じられない。
「緑川はそういうのに騙されるタイプじゃないと思ってたんだけどね。ヤツも所詮、男だったか」
「騙された……」
「騙されたんでしょ? 学生時代さんざん女の子をつまみ喰いしたくせに、清純派ぶりっ子に食い物にされて痛い目を見たわけね」
「ちーちゃん……」
 私の情けない顔を見て、千夏はまた笑い出した。
「ごめん、ごめん。でもお陰でヤツはあんたの研究室に移ってきたわけでしょ? つまりその怖ーいぶりっ子のお陰で今の幸せがあるわけじゃない。感謝しなさいよ」
「感謝って……」

 私は青沼さんの黒目勝ちな瞳を思い出した。
「私、怖かったんだと思う。私もいつか、青沼さんのように緑川くんに疎まれる存在になるんじゃないかって」
「それだけじゃないでしょ? ハナ、素直になんなさい」
 千夏は人差し指を私の鼻につきつけた。
「あんたはそうなって、緑川にすがりつく自分を見るのが嫌なのよ。違う?」
「ちーちゃん……」
「いつも涼しい顔をして、いいの、私は別に欲しくないわって構えていたでしょ? 恋に振り回されるみんなの相談を聞きながら、本当は優越感に浸ってたでしょ?」

 私は言葉が出てこなかった。こんなにも見透かされていたなんて。
 学生時代、それほど千夏と親しく話したことはなかった。お互いいつも実験に追われていたし、所属する研究グループが違った。それでも博士課程の女子は留学生ばかりで日本人女子が少なかったので、行事ごとに顔を合わせる。何かと比較されることも多かったので、お互いに意識していた。彼女は同級生と結婚して、大学助教授のダンナを支えている。博士号を持っているのに、企業の化学研究室の契約社員をしながら子供を育てているのだ。

「正々堂々と戦いなさいよ。女の世界へようこそ」

 私は口をぽかんと開けて途方にくれてしまった。
 千夏は私を見据えていた表情をふっと和らげた。
「私はうれしいのよ。ハナとこんな話ができるなんて」
 そういえば、いつも一方的に悩みを聞くばかりで自分が相談したことなんかなかった。なかなか新鮮だ。
「ホントだ……ちーちゃんとこんな話、するの初めて」
「でしょう。ハナは眠れる竜って呼ばれていたのよ。私は虎ってわけ」
「竜……」
「竜虎で同盟を組めば無敵ね」
 にっこり笑う千夏につられて、私も笑い出してしまった。こんな女友達、今までいなかった。
「私もうれしい。こういう話って楽しいのね。いつもみんな、何がうれしくて似たような話ばっかりしてるんだろうって思ってたけど」
「なるほど。そういうこと考えながら、口では慈悲深いアドバイスを与えてたわけね」
 声を上げて笑い合う私たちを見て、緑川が遠くでにっと笑って寄越した。

 本当だ。私は今までずっと仮面を被って演技をしていた。そして同時にそういう自分に罪悪感を感じていた。だから友人や家族といても疲れるばかり。
 子供の頃と変わらないフリをして男の子たちと野山を駆け回っていても、心も身体もどんどん変化していく。

 ありのままの自分を見つめて、そのままの自分を好きになろう。
 でないと自分を好きだと言ってくれる人の言葉を信じることができない。まっすぐな気持ちで人を好きになることができない。


 舞踏会なんか興味がないというフリをしながら、けなげに床掃除をしていた。こうして舞踏会に来てみたけれど、一生踊っていられるわけじゃない。
 私は王子様を射止めてお城で暮らしたいんだろうか?

 お城の暮らしは楽かもしれないが窮屈そうだ。
 
 そう、森のそばに畑を作って小さな家で暮らしたい。誰かに隷属することなく、卑屈にならずに身の丈にあった暮らしがしたい。
 そんな生活を共にできる人なら……手を取りたい。

 自分が何を欲しいか、どんな自分になりたいか。自分から探しに行ってみよう。寝たフリをして自分を変えてくれる誰かを待つのは飽きた。誰かが自分を選んでくれるのを待つのも飽きた。誰かが自分を救い出してくれるなんて夢見る時間も終わった。

 怖い魔女に捕らえられたドジな王子様を助けに行ってあげようか。
 捕まったような気分で居心地悪かったけれど、自分が捕まえるなら悪くない。魔女の代わりに私が虜にしてあげよう。
 解放の呪文なら知っている。解放と束縛の呪文。

「あなたを信じるわ。あなたを愛してる」


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〔テーマ:自作小説ジャンル:小説・文学

 
ありゃりゃ
こういうオチなの?
予想外の展開と言えなくもないが……

>「あなたを信じるわ。あなたを愛してる」 解放と束縛の呪文

とな? ふぉっふぉっふぉ
ダンブルドア校長が微笑んでくれそうな感じでいいのかもしれないですね









        
 
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