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異邦人のひとりごと

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仕事でこの土地に来てもう10年以上になる。
このところ長くおしゃべりする人がネィティブの方々なので、自分もつい方言が出る。
でも方言の ”語彙”を使っているだけで、発音とかいろいろ間違っているので、 すぐ他所から来たとわかるらしい。
で、出身地を聞かれる。
それが初対面の人のパターン。

出身地から1000キロ以上遠いとこに来たというので、珍しがられる。
次になぜこんな遠いとこに来たの? と聞かれる。

近頃学習したので、その後も付き合いのある人でなければ、”こっちに親戚がいて”とか 何か、適当にお茶を濁す。

あるいは、”ああ、旦那さんの転勤か何か?”とか向こうが出したヒントにあいまいにうなづいておく。

女が自分の仕事を得るためにわざわざ都市から地方に移るのは、かなり珍しい事態なのだと、 学んだ。


この小さな街では、みな3代遡れる付き合いらしい。
そんなコミュニティに他所からぽんと入って来て、そこの活動に混ぜてもらうには、そういう3代 遡れる身元のはっきりした誰かに怪しいものじゃない、と保証してもらう必要がある。
直接保証してもらわなくとも、そこの人々の知っている誰かの名前を挙げると、安心してもらえる。

そうしてそこで一緒に5年活動しても、名前を覚えてもらえないことがしばしばだ。
”〇〇から来た””〇〇さんの知り合いの”という修飾語だけで呼ばれる。

多分、このコミュニティの中の誰かと結婚して子供を生んだら、初めて私自身が一員と認められるだろう。それまでは20年でも30年でも ”異邦人”で ”お客さん”なのだ。
いや、違うな。
私の子供は一員かもしれないが、私はずっと ”〇〇の嫁”と呼ばれ、いつか実家に帰る客人、ビザを 持つ異分子として扱われるのだろうと思う。

そういう状態に慣れたけれど、時々ちょっと寂しい。


  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆  


この土地に来て篠笛を吹くようになった。
祭り囃子、お神楽などの団体にいくつか混じって参加させていただいている。

そういう団体は、まだ圧倒的に男性が多い。
もともと神事に関わることなので、ピアノの習い事と位置づけが違うようだ。

祭り囃子だと男女半々ぐらいだが、そういう場所の女子は〇〇さんの娘だったり〇〇くんのお母さんだったり、あるいは職場の団体として参加している場合がほとんどだ。
つまり、個人で、自分が自分自身を代表して、ぽっと参加しているわけじゃない。
立場を保証された女子。

そうでない女子は立場を弁えて行動しないと、男性からも女性からも反感を買うことになる。

私は他所から来て、しかも女性で、自分の仕事で経済的に独立しているという意味で三重に異邦人なのだと思う。
このコミュニティの平和を乱すもの。

マレビトはマレビトとして、饗応を受け、この土地を祝福して去っていかなくてはいけない。

このムラの一員になれないのなら、せめて宣教師にならず、博物学者としてすべてに興味をもち賞賛して通り過ぎよう。

なぜなら私はこの土地が気に入ってしまったのだから。
この土地に骨を埋める覚悟だ。名のない無縁仏として。

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〔テーマ:物書きのひとりごとジャンル:小説・文学

 









        
 
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