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category夢の記録

『夢四夜』

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……こんな夢を見た。

全部、実際に見た夢なので、ある意味ノン・フィクションといえる。
その夢が意味するものは……などと分析しないで欲しい。

何度も繰り返し見た夢もある。
今でも、その夢の温度、湿度、匂い、風速、明るさ、手触り……生々しく思い出せる。

これが何かを意味していて、自分に何かを伝えようとしているなどと、考えたくない。
悪夢を懲服するために、ここに細かに記載して封じようと思う。


 ===== ===== ===== ===== ===== ===== ===== 
 こんな夢を見た。


 白い木戸がある。

 木戸は上が頭を低くしなければくぐれない高さで、下の敷居も高い。ちょうど胴体の長さくらいしか空間がない。

 私と一緒にあと二人、女の子がいた。当時の同居人と、もうひとりよく見知った娘だったと思うが、今は誰か思い出せない。彼女たちは難なくくぐり抜けてしまった。

 私の番が来て木戸に近づいてみると、その空間の内側に虫のまゆのようなものがついている。よく見るとそれはカニだった。足に毛の生えた、乾いた赤い色をしたケシゴムくらいの大きさのカニが、端正な紡錘形のまゆに一匹ずつつめられて、みっしりとくぐり戸を囲んでいるのだ。カニの足は乾いて白っぽくなっていたが、まるで生きているようで、近づくと群全体がざわ、とうごめきそうだった。こんな戸口を彼女たちはくぐったのだ。

 自分は足を差し入れてみたり、腕をそっと入れて首をくぐらしてみたりしたが、どうやってもカニに触れてしまいそうで気味が悪くてくぐれない。えい、触れてもかまうものか、と思ってもやはり決心がつかない。あぐねているうちに、向こう側で待っていた二人の女は先に行ってしまった。



 こんな夢を見た。


 雪が降っている。

 ハラハラと降っている。手に受けてみると冷たくない。灰のように乾いて軽い。雪と見えたのは花びらだった。薄紅や空色や薄黄の花びらがハラハラ降ってくる。花びらと見えたのは蝶の羽だった。よく見るとトンボやハチや蛾の羽も混じっている。

 ポトリと足下に何かが落ちてきた。拾ってみると小鳥だった。目をつむって、首がカクンとゆれた。重さのないような、あっけない、心許ない死骸だった。つづいてポトリと別の小鳥が落ちてきた。バサッ、ドサッと音をたてて大きな水鳥やカラスが落ちてきた。

 驚いて辺りを見回すと、鳥だけではない。ネコや犬、牛や何かわからない死骸がるいるいと地面に転がっていた。


 私の立っているのは白く乾いた荒れ地だった。陶土のように青白く細かい土の地面が奇妙に平らに拡がっている。起伏はなく、ところどころひび割れた素焼きの陶板のような地面だ。蹴ればカン、と音がしそうだった。風がないので、細かい土も舞い上がることなく静かに地面を薄く覆っている。

 太陽がカッと照りつけているが、暑くない。まぶしくて目が痛いほどだが、暑さも寒さもかんじなかった。風もない。音もない。空気の動きが全く感じられなかった。

 やがて地平線に一団の人間が現れた。みなやせこけて、ボロをまとって、頭髪もなく、男女の区別もできない。彼らは押し黙ってゆっくりと私の方に近づいてきて、私を取り囲んだ。日焼けした皮膚は固く張りつめて、青黒く光るようだった。かれらはやにわに私につかみかかると、カッと眼を見開いて叫んだ。

「おまえのせいだ!」

 私は彼らに固い地面に引き倒され、衣服をもぎ取られた。私もこれから彼らと一緒にさまよって、誰かを呪いに行くのだとわかった。




 こんな夢を見た。


 私たちは最後の生き残りらしかった。

 輝く湖面に突き出た塔の中に住んでいた。私は塔から一歩も外に出たことがない。湖岸の向こうに拡がる白い大地、その彼方にけぶる白い絶壁を、毎日飽きることなく眺めていた。あの壁を登って、あの上からこの湖と塔を眺め返したら、どんな気持ちだろう。その憧れは次第に抑えがたくなってきた。

 とうとう家族を説き伏せて、猫を連れて塔を下り、船で湖岸に向かった。波は静かで、ちゃぷんちゃぷんと穏やかにボートの底を洗った。白い太陽が湖面に輝いていた。

 風もなく、暑くもなく、寒くもなく、素晴らしい春の日だった。絶壁が幻のように少し霞んで浮かび上がって見えた。

 難なく湖岸に上陸した。私と猫は陸地に立つのが初めてだったので、しばらく波打ち際で躊躇していた。すぐに湖を離れるのは怖ろしかったし、初めて見る湖岸の風景をじっくり見たかった。猫は寄せては白い玉砂利にくだける小さな波と真剣に戦っていた。何度も追いかけていっては、慌てて飛びすさったりしていた。そのうち猫の様子が変わった。しきりに眼をこすったり、鼻をこすったりし始めたと思うと、今度は身体中を必死でなめ始めた。ついには地面にころがってのたうち回りだした。何かかゆくてたまらない、というようだ。私は助けたくて抱き上げようとしたが、彼のパニックは治まらず、ますますもんどりうっている。何か虫が付いているようには見えない。

 湖水が有毒なのかもしれない。私は慌てて清水を探した。少し離れたところに打ち捨てられた施設を見つけ、まだ働く水道を見つけた。暴れ回って泡を吹いて苦しむ猫を押さえつけて、水道の下に運び、清水で体中洗ってやった。ようやく痛みは治まったようだが、皮膚のあちこちがただれて、抜けた毛の間から赤く腫れ上がって見えた。

 猫はまだしきりに顔や体中をなめては洗っていた。それを見ている内に、私も顔がぴりぴりするのに気がついた。鼻孔がかゆく、涙が出てくる。かゆさはすぐに耐え難い痛みに変わった。水道の蛇口を大きく開けて、清水をかぶった。清水で洗うと痛みが治まるのを感じた。顔を何度も洗う内に、皮膚の感じが何だかおかしくなった。水をかけて大きく頬をこすった瞬間、皮膚がずるりと下がって、指が骨にあたるのを感じた。

 急いで足下を見ると、猫はすでにこときれていた。




 こんな夢を見た。


 そこは子供用の読書室らしかった。

 安物の妙にハデな緑色のカーペットが床にしいてある。座っているとシリやひざが板にあたって痛かった。背の低い本棚や展示棚が並んでいる。窓には稚拙な切り紙細工がぞんざいに貼ってあり、子供がクレヨンで塗ったらしいちょっとクシャクシャした画用紙のモビールが天井からいくつか下がっている。ひどく低い長テーブルが何列か作ってあり、床に座って本が読めるようになっている。

 そこで私は友人と話していた。その友人は幼なじみだったが、会ったのは数年ぶりだった。結婚したと聞いてお祝いを送ったが、それからずいぶん経って一度短いお礼の手紙が来た。それきり音沙汰が無くなっていたのだ。人づてに離婚したと聞いた。

 前に会ってからあまりに時が経っていたので、私たちが空白を埋める努力はせず、いきなり幼なじみに戻った。

 彼女は首をやや傾けて、ぼんやりした顔で話を続けた。近頃彼女の元に精霊が訪れるという。最初は何かのはずみに、ふり返った目の端や灯りをつける前の部屋の隅に見かけていたのが、だんだん普通に見るようになった。気を付けて見ていると2種類いて、明るい色のと暗い色のがいるらしい。明るい色のは蛍石のような白っぽい淡い緑色をしている。暗い方のは黒曜石のような、日が射し込む深い淵のような色をしている。

「ふたりは交互に現れるので、近頃は時計代わりよ」

 彼女の話を聞くうちに彼女の心の中の情景が私にも見えてきて、辺りが森の中のような緑色の光に包まれ出した。向こうのテーブルで話していた他の友人達の声が遠く、聞こえなくなり、姿も水を通して見たようにボンヤリしてきた。私と幼なじみの二人だけが緑の中で話しているのだ。

 やがてほっそりした長い髪の精霊が木々の間をひっそり通り過ぎていく。歩くに従って、衣の端や髪の緑色が深くなったり淡くなったりした。周りの光景はますますぼやけていき、森はますます鮮明に現れてくる。私たちの座っているところは日にぬくまった柔らかい草の上だった。

 青白くぼおっと輝いた赤ん坊のような天使がトコトコ歩いてきて、私たちの後ろを通り過ぎ、図書室を出ていこうとした。私は彼を呼び止めようとして声を出し、目が覚めた。



 あまりに印象深い夢だったので、その友人に手紙を書いた。すぐに返事が来て、彼女と数年ぶりに再会した。

 それから2カ月も経たないうちに私も離婚した。
 あの時通り過ぎていったのは、生まれるかもしれなかった夫との子供だったのだとわかった。

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〔テーマ:自作小説ジャンル:小説・文学

 









        
 
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